「SUNNY1~6」松本大洋
大人になって久しぶりにハマった漫画
大人になってから、普段ほとんど漫画を読まなくなりました。子供のころは漫画家になることが夢で藤子不二雄の「まんが道」をバイブルにしながら本気で100ページくらいの漫画を描いていたのに。ところが、どうにも魅力的な画風に惹かれて久しぶりに夢中になった漫画がこの「SUNNY」です。
親と一緒に暮らせない星の子学園の子供たち
舞台は親のいない(もしくは親に捨てられた)子供たちを預かる「星の子学園」。そこで孤独と親のぬくもりへの郷愁に包まれながら生きていく様々なキャラクターの子供たちが描かれています。母親のにおいを思い出せるからとニベアを持ち歩いてにおいをかぐ子、車を盗んで親に会いに行こうとする子、星の子学園にいるとをコンプレックスに思う子、などなど。その視点はものすごく繊細で、優しく、せつない。
松本大洋さんの自伝的作品
調べてみるとこの物語は作者の松本大洋さんの自伝的要素を多分に含んでいるようです。でなければこんなリアリティではなかなか描けません。漫画でこんなに繊細な物語が描けるのかと驚きました。
唯一無二の魅力的な絵
そしてやはり魅力的な絵。スクリーントーンを使わず、ベタ塗までペンで手間をかけた味のあるタッチ。そして、どのコマをとっても驚くほど完成度の高い構図。色のセンスもものすごいので、カラーページも毎度見入ってしまいます。
さらにすごいのは松本大洋さんは作品によってそのタッチを変幻自在に変えられるところ。「ピンポン」と「竹光侍」は同じ作者とは思えないほどの画風の違いです。なのにそれぞれのタッチがどれもオリジナリティにあふれていて、かつ魅力的。どんな漫画家も作品を見ると誰のフォロワーなのかがなんとなく透けて見えますが、松本大洋さんはその先祖が見えない。本当にすごい人だと思います。
良い小説のような上質な読後感
読み終わったとき、上質な小説を読んだときに似た感覚になりました。
評価:★★★★★(五段階評価)