とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「日本の工芸を元気にする!」中川政七

ふきんをはじめとして日本工芸を現代的に解釈しなおした雑貨などで人気の中川政七商店の13代目、中川政七さんの著書です。

注目の若手経営者

ユーザーとしても人にプレゼントをする時によく利用することや、社長の年齢が近いこと、グラフィックデザイナーとして注目している水野学さんとのコラボレーション等もあり、以前から気になる存在です。

この本には著者が中川政七商店の経営を引き継いでから、ポーター賞を獲得するまでの経営者に成長するまでの悪戦苦闘の様子が語られています。

ブランディング

読んでいると、ブランディングというものの面白さが伝わってきます。何が本質なのか。何を残して何をそぎ落とするのか。誰をターゲットに何を魅力として売っていくのか。そのコンセプトに則ってロゴを決め、商品のデザインを決め、店舗デザインの方針を決めていく。

ブランディングのノウハウを使ったコンサルティング

そのノウハウが蓄積されていくと今度はそれを使ってまるで町医者のように全国各地の地方で埋もれている工芸技術を掘り起こし、ブランディングし、人々に伝え、再生するコンサルティングにも乗り出します。さらにすごいのはそこで再生した伝統工芸をネットワーク化し、「大日本市」という形で展開することがにつながっていることです。

今、日本には世界中からどんどん観光客が押し寄せています。日本らしいお土産を買って帰ろうとするとき、中川政七商店のように日本らしさ、日本の伝統工芸を現代の美的感覚で再解釈したものはきっと魅力的に映るはずです。

上場取りやめ

この会社はきっと伸びるだろうから、株でも買ってみようかなと思って一度調べてみたらどうやら上場はしてないようでした。が、この本を読んでみると冒頭で上場直前まで行って取りやめするシーンが出てきて驚きました。上場すると株主への説明責任も生じ、意思決定のスピードが鈍ってしまう。すでに上場しなくても会社の知名度も上がってきた、との判断だったようです。同じく注目している蔦屋書店を運営するCCCなんかも上場していません。おそらく同じ理由だと思います。面白い企業にはこんな風にあえて上場しないというスタンスの企業があります。

ブランディングっておもしろいと思われてくれる一冊

自分の会社のブランディングを妄想することがあります。ロゴデザインはこれでいいのか?HPのデザインはこれでいいのか?受付のデザインは?オフィス空間は?現場服は?封筒は?それらが一つのゴールに向かって同じベクトルを向いているのか?中川さんはそういうことを考えるのが好きで好きでしょうがないという感じです。ブランディングっておもしろいな、そう思わせてくれる一冊です。

 

評価:★★★★(5段階評価)

 

日本の工芸を元気にする!

日本の工芸を元気にする!