とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「株式投資の未来」ジェレミー・シーゲル

名著と呼ばれる本はやっぱりすごい

長期投資家界隈で、名著と呼び声の高い本書。実際に読んでみて、確かに名著でした。名著というのは誰かが一生懸命研究したことの受け売りではなく、手間暇かけて研究して、考えに考えたその本人が絞り出すように書いた本であることが多いように思いますが、これはまさにそんな本です。

ウォール街のランダムウォーカー」「敗者のゲーム」以来の目からうろこ感

ここ数年、インデックス投資に興味をもって色んな本を読んでみましたが、やはり古典的名著と呼ばれる本は説得力が違います。バートン・マルキールの「ウォール街のランダムウォーカー」とチャールズ・エリス「敗者のゲーム」がその2冊でした。自分の中でのインデックス投資観は元をたどればこの二冊に集約されるような感じでした。ひたすらインデックスファンドによる国際分散投資を継続的に行う、いわゆる「ほったらかし投資」が知る限りの最もベターな方法であると考えていました。

バフェットが老舗企業を買う理由がわからなかった

ところが、長期投資の世界ではウォーレンバフェットをはじめとする人たちが、今を時めくアマゾンやフェイスブックやテスラではなく、コカ・コーラやP&G等の老舗企業に投資をしているといいます。この理由がよくわかりませんでした。どう考えたってこれから伸びるのは老舗企業ではなく、新しいテクノロジーを用いて世界を変えていく新興企業なのではないかと。だったら投資すべきは新興企業だし、すでに成熟した先進国ではなく新興国なのではないかと。この疑問が解けずにずっともやもやしていましたが、この本を読んでその理由がわかりました。

成長の罠

私のこの考えはまさに本書で「成長の罠」と解説されていました。よくある落とし穴だったようです。みんな、フェイスブックやアマゾンに、そして新興国に将来性を感じます。そうするとそこの期待値が過剰に上がりすぎます。過剰に上がりすぎた株価が結局リターンを圧縮してしまう。要するににみんなが注目するハイテク株は割高なのです。だからバフェットは長らくIT企業を買いませんでした。

配当再投資

もう一つ目から鱗だったのは「長期投資においてリターンの源泉となるのはキャピタルゲインではなく配当であり、配当の再投資によるリターンだ」ということでした。はっきり言ってこれまでキャピタルゲイン主体でというか、配当のことなど殆ど意識すらしたことがありませんでした。しかし、配当の利回りの高さとその継続性を考えると、注目すべきはハイテク分野ではなくエネルギーセクターや生活必需品セクターあるいは製薬などのヘルスケア分野だといいます。本書ではそれらを膨大なデータとその分析をベースに語っていくのですごく説得力があります。

シーゲルのポートフォリオ

シーゲルの推奨するポートフォリオは50%をワールドインデックスファンドに、残り50%をリターン補完戦略として配当利回りの高い老舗企業、しかもエネルギーセクターや生活必需品セクターあるいは製薬などのヘルスケア分野への長期投資に充てるというものです。これはマルキールの理論をさらに一歩前進させた理論のように見えます。もちろん単純なインデックス投資よりもまとまった資金が必要だし、銘柄選定の知識も必要そうですが、かなり参考になりそうです。

ヘタな投資本を10冊読むくらいならこれを10回読んだほうがいいかもしれません。

評価:★★★★★(5段階評価)

 

株式投資の未来?永続する会社が本当の利益をもたらす

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