とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「代官山再開発物語」赤池学

代官山アドレス開発のドキュメンタリー

久しぶりに建築がらみの書籍のご紹介です。再開発案件に初めてかかわっていることもあって勉強を兼ねて読んでみました。これは代官山アドレスが再開発事業として計画されてから実現に至るまでのドキュメンタリーです。

複雑な「再開発」という仕組み

再開発というのは、その場所にもともと住んでいた地権者がいて、その人たちに同じ規模の住宅やお店を新しく用意しつつ、高層化を図って住宅やオフィスを積層し、その売却益で新しい建物を建てるというスキームになっています。言葉にすると簡単ですが、この地権者を計画に合意してもらい、新しい建物にまとめ上げるというのは膨大な時間と労力がかかります。

「プロフェッショナル仕事の流儀」を観ているような感じ

特に代官山では既存の同潤会アパートの歴史が長いだけに権利関係が複雑で、その整理にはとんでもない苦労があったことがうかがえます。計画に何年もかかるので、その間に経済状況や地価も変動するし、お年寄りには亡くなる人も出てきます。事業に参加するといっていた企業が撤退したり、ギリギリのところで救世主として東京電力が登場したり、困難に次ぐ困難。プロフェッショナル仕事の流儀か何かを見ているような感じです。

再開発に関心のあるすべての方にお勧め

再開発に関する書籍はあまり充実しておらず、出ている本も教科書的なお堅い本が多く、事業にかかわる実際のイメージがなかなか湧きません。特に私は初心者で経験もないので、この本を読んでだいぶイメージが湧いてきました。これから仕事で再開発にかかわる方、あるいは自分が地権者だったり、再開発された構造住宅に住む方、近隣で再開発があり気になっている方などにもおすすめの良書です。

 

※ほかに良い再開発の本があったら教えてください。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

代官山再開発物語―まちづくりの技と心

代官山再開発物語―まちづくりの技と心