「本気になって何が悪い」唐池恒二
JR九州会長の武勇伝
ずばりこれはJR九州の会長の武勇伝です(笑)今は他の鉄道会社もデザイン性の高い列車を運行するようになりましたが、そもそもやり始めたのはJR九州。デザイナー水戸岡鋭治さんとのタッグはまさに理想的なパトロンとデザイナーの関係です。普通に考えたらJRのようなお役所的企業でデザイナーを選ぶとなれば毎回入札になったりしそうなところを、特命でしかも継続的にやっています。秀吉と利休の関係にも似て見えます。
人間臭い物語
JR九州がこういったデザイン性の高い列車にチャレンジしたり、飲食店の経営にチャレンジしたりしてきたエピソードを熱っぽく語る社長。それはスマートで横文字だらけのビジネス論というよりはもっと人間臭い人情物語という感じです。楽しそうに仕事をする社長と、社長に火を付けられて情熱に燃える社員。ちょっと出来すぎのような気もするけれど、この熱い社長だからこそJR九州はチャレンジできているのかもしれないなと思わせられる内容でした。ちなみに読んでいると、会長のダジャレ、おやじギャグのオンパレードです。
「三島会社」と呼ばれて
これから人口が減っていく日本。特に人口の減少が激しい地方の鉄道会社には厳しい環境になると思われます。JR九州、JR北海道、JR四国。JR三島会社とも呼ばれ、JRの中でも見下された会社が、車両のデザインや、飲食店の開発などを通じてインバウンドや観光需要に活路を見出す姿には応援したくなります。
画家・山口晃さんの表紙
本書のもう一つに魅力は、画家、山口晃さんの書き下ろしの表紙や挿絵です。表紙はななつ星やビートルなどJR九州を語るうえで欠かせないモチーフをちりばめつつ、現代と過去が不思議と混然一体になった現代的洛中洛外図のような様相。会長と山口さんが一緒に街歩きをするコラムもあります。
いつか「ななつ星」乗ってみたいです。
評価:★★★(5段階評価)