とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「アマゾンが描く2022年の世界」田中道昭

生活を支配しつつあるアマゾン

ちょっと怖いくらいに便利で、安く、生活のあらゆる分野に触手を伸ばしつつあるアマゾン。最初はネット書店だったのがいつの間にか僕は本だけではなく色んなものアマゾンで買うようになりました。僕もアマゾンプライム会員になり、アマゾンプライムミュージックで音楽をタダで聴き、アマゾンプライムフォトでスマホの写真データの無料でバックアップをとり、アマゾンプライムビデオでタダで映画を見、アマゾンプライムリーディングでタダで本を読んでいます。もはやアマゾンプライム会員に「入らないと損」というレベルです。

実はIT部門「AWS」が7割の利益をたたき出す

この本はそんなアマゾンのビジネスと創業者ジェフ・ベゾスを分析した新書です。この本を読んで初めて知って驚いたのはアマゾンの収益構造です。実はアマゾンが最も収益を上げているのはAWSと呼ばれるアマゾンのIT部門が利益の約7割をたたき出しているということです。これは知りませんでした。怖いくらい安い様々なサービスが成立するのはAWSの収益をそのほかの事業に回しているからなのでした。これはほかの企業にはなかなかマネできない。

日本でプライム会員になるのは特にお得

また、アマゾンの事業のなかで最も収益が低いのが北米以外の地域での事業。プライム会員の料金もアメリカに比べて随分日本は安いようです。とすると、日本でプライム会員が格安で提供されているのはAWSや北米での事業の収益が充てられているからで、そいう言う意味でも日本人がプライム会員に入るのはお得だということがわかります。(アメリカでもプライム会員の料金が短期だと値上がりしているようなので、日本でもシェアを獲得しきった時点で会員の料金を上げるかもしれませんが。。。)

アマゾンより実はアリババのほうが凄い!?

ベゾスはどこか不気味で、冷徹なイメージがあります。企業としてもあまり社会貢献意識が高いほうではありません。地域や政府ともしょっちゅう衝突しています。それと対照的に本書で語られているのがジャック・マー率いるアリババです。政府とも良好な関係を築き、中国の若者からは人格的にも高く評価されている。また、アリペイに代表されるフィンテックの分野ではアマゾンを凌いでいます。その成長スピードや企業としての社会貢献意識の高いスタンスを見ていると、だんだんアマゾンよりもむしろアリババに可能性を感じてきます。

そんなアリババをスタートアップの時代に見出し、投資していた孫正義という人の投資家としての目利き具合に改めて感心する、そんな一冊でした。

ちょいちょい著者の自慢話が入るのと、プロフィールが長いのが減点です。

 

評価:★★★(5段階評価)