とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「変な経営論」澤田秀雄

変な経営者

ハウステンボス社長にしてHISの社長兼会長の澤田秀雄さんのインタビューをまとめた新書です。最近ではロボットがサービスを行う「変なホテル」でも知られています。さらに今年の3月から3か月~半年間世界中を一人旅するという。とにかく次から次へと新しいことを形にしていくので見ていて面白いです。変な経営者です。

ハウステンボスの再生

それまで何人もの経営者が後を継いで、再建に失敗したハウステンボスを見事に再生したのは有名な話です。チューリップが咲いていないと客が呼べない季節には日本一のイルミネーションをやる、そもそも花の種類を増やしていつも何かの花が咲いている状態にする、花の仕入れ先を見直す、毎日ちょっとずつ上げていた花火をまとめてあげることで九州一の花火大会にする、などなど、自由な発想で再建を進めていく様子は痛快です。テーマパークは価格破壊が通用しない世界、いかに人を楽しませる仕掛けを、そこでしか体験できないイベントをしかけられるかが勝負なのがよくわかります。

変なホテル

恐竜ロボットが受付をすることで有名な「変なホテル」。その試行錯誤の様子がまた面白いです。なぜあのロボットが恐竜になったのか、実はいろんなロボットを比較したら、博物館などに置かれる恐竜ロボットが最も耐久性が高かったから、というのが理由だったようです。そんな試行錯誤の果ての恐竜だったんですね。
このほかにも輻射冷暖房に調整して結露で部屋が水浸しになったり、料金を客に見めてもらうシステムを導入しようとして失敗したり。それでもとにかくやってみる。完璧でなくてもさっさと初めて早く失敗して次に進む。建築的には最新の木造技術であるCLTにもチャレンジしています。とにかく思いついたらどんどん実行するスピード感と実行力があっぱれです。いずれこれをフランチャイズ化して500店、1000店に増やしたいといいます。そのころにはロボット技術も高度に安価になっているでしょうから、さらにすごいことになっているかもしれません。

総合旅行会社は消えていく

HISを創業した本人が「総合旅行会社は消えていく」といいます。確かに、今旅行をしようと思ったらネットで簡単に予約ができてしまいます。ただ、澤田さんは旅行だけで稼ぐつもりはさらさらないようで、ハウステンボスを実験場にドローンを飛ばしたり、セグウェイを走らせたり、行動でできないことにどんどんチャレンジして、販売マージンをとるビジネスモデルにチャレンジしたり、「変なホテル」のロボットを売ってマージンを取ったり、エネルギーを作ったり、植物工場を作ったり、とにかく時代に合わせて相当柔軟な展開を考えられているようです。

健康・運

最後に本書では健康と運についても言及されています。会社を一度も休んだことがないという澤田さんが言う健康になる五つのポイントはこちら。

1.バランスのいい食事

2.明るい気持ちを持つこと

3.呼吸を整えること

4.十分な睡眠

5.適度な運動

ごくごく基本的な項目です。
そして運についてはビジネスをするうえでリーダーを選ぶときには「運のいい人」を選ぶといいます。(試しに運の悪い人で固めてみたら赤字が出るわトラブル続きで大変だったようです。)なるべく付き合う友人は運のいい人にしようと思いました(笑)

何より仕事を楽しんでいるなぁ、という経営論の本でした。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

変な経営論 澤田秀雄インタビュー (講談社現代新書)

変な経営論 澤田秀雄インタビュー (講談社現代新書)