とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「昭和史」半藤一利

昭和を知りたいと思いました

歳をとると未来と同じくらい過去への興味が出てくるようになった気がします。自分はどこから来たのか。この世界はどうやってできたのか。人間ってどんな生き物なのか。

司馬遼太郎さんの著作で明治について少しずつその姿を知るようになると、その続きの昭和が気になります。昭和は自分の両親が生きた時代であり、自分の祖父母が生きた時代。今は穏やかな生活を送っている祖父母はどんな生きた戦前、戦中、戦後はどんな時代だったのか。

比較的読みやすそうで、評価の高そうな半藤さんの文庫本(古本)をアマゾンで注文してみました。

戦争

この本では日本が戦争に向かっていく様子、軍部が暴走していく様子、天皇が苦悩する様子。振り回される国民たち。そんな様子が克明に描かれています。振り返ってみると世界情勢を正しく把握できていない、非合理的な意思決定の数々なのですが、その時代の渦の中にいるとその不合理さが見えなくなってしまうものなのでしょうか。現状を正しく把握せずに、精神論だけで突っ走った挙句にものすごい数の命を失って最後は原爆まで落とされて戦争が終わります。

戦後

ただ、驚いたのは終戦後の人の意識の変化です。鬼畜米英と言っていたのがウソのようにアメリカナイズされて行き、あっという間にそれまでの「常識」が新しい「常識」にすげ変わります。これが日本人特有の気質なのかどうかはよくわかりませんが、「常識」なんてあんまり真面目に取り合わないほうがいいような気がしてきました。常識はコロコロ変わる。平成の今だって昨日まで「24時間戦えますか」と死ぬほど働かされていたと思えば、寝てない自慢をしていたやつらが平気な顔をして「ワークライフバランス」を重視したライフスタイルのすばらしさを語っています。

戦後の人々の回復力はすさまじく、あっという間に闇市ができ、経済が回り始めるその立ち上がりの速さには驚かされます。人間の生命力というか、資本主義経済のパワーというか、それは焼け野原の後からでも雑草のように生い茂るんだなと。

読んでよかったなと思える本でした。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)