とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「建築家のためのウェブ発信講義」アーキテクチャーフォト・後藤連平

建築の情報サイト、アーキテクチャーフォトの編集者後藤廉平さんの本です。アーキテクチャーフォトは日常的によく見ていたのですが、後藤廉平さんという個人がやっているサイトだとは、また、その後藤さんが同世代の京都工芸繊維大学出身だということも知りませんでした。

建築家のウェブ発信

建築家のウェブ発信といえば、自身の設計事務所のHPで、プロフィールや作品の写真を掲載し、字は小さく、モダンなデザインでまとめられた素気ないものが多かったように思います。ところが今は発信のツールがHPだけでなく、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどにも広がっています。また、後藤さん曰く、建築家のウェブ発信は「学問としての建築」だけでなく「ビジネスとしての建築」にも活用できるといいます。

アーキテクチャーフォト

アーキテクチャーフォトは建築の情報をリアルタイムで伝えるニュースサイトとしてなんと現在では27万ビューを誇るといいます。それを個人で築き上げたのだから驚きです。ビジネス的にはアーキテクチャージョブボードは設計事務所の求人サイトとしてうまく回っているようです。たしかにアトリエ事務所の求人情報などはこれまで口コミでしか伝わらず、人脈に負うところが多かったので有用です。

ウエブ活用の3か条

建築家のサイトは通り一遍の構成のものが多いですが、建築家の個性は様々だし、その強みは千差万別なので、それを活かしたウェブ発信が重要です。そして3か条として下記の3点があげられています。

1.継続に勝るものはない

2.「ファンづくり」という視点を持つ

3.信頼される発信を心がける

こうしてみると建築家は自分の全人格的魅力を継続的に発信し続ける技術も設計技術と同じくらい重要な時代になっているのかもしれないなと思います。

とくに感心したのは第3講の

1.情報は受け手に合わせて編集する

2.戦略的に言葉を選ぶ

3.移り変わる社会の変化を意識する

といった項目。インスタのハッシュタグの言葉選び一つとっても誰に向けて届けたい情報なのかによって変わってきます。そこまで考え家ことはありませんでした。また、HPにしても業界向けのサイトと、一般客向けのサイトを使い分けたりする建築家も紹介されています。考えてみれば組織事務所のウェブ発信だってHPを作るだけではなく、広報室がツイッターやインスタをやっても面白いかもしれません。

建築家に設計を指南するのではなく、ウェブ発信を指南する本はおそらくこれが初めてではないでしょうか。その切り口も新鮮ですし、読むとこれは建築家必須のリテラシーであると痛感します。リテラシーのない建築家はリテラシーのある建築家にどんどん仕事を奪われてしまうかもしれません。必読書です。

 

評価:★★★★★(5段階評価)

 

 

建築家のためのウェブ発信講義

建築家のためのウェブ発信講義