とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「自分のことだけ考える。」堀江貴文

いつものホリエモン

ホリエモンはかなりのペースで本を書いているので、流石に既視感のある内容ではありますが、とにかく他人に惑わされる事なく自分がやりたい事をやりたいように「今すぐ」やれ、ということを繰り返している本です。

 

IT系のスピード感

特にITのスタートアップ系の人達の考え方は、業界が物凄いスピードで日々進化しているので、「とにかく荒削りでも始めてみる、早く始めて早く間違えて、早く学んで、早く修正し、早く市場を掌握する。」そういう点で共通しているような気がします。携帯のアプリにしても日々バグが修正され、アップデートされています。ということは最初にそのアプリをリリースした時はバグだらけで不完全なものだったということです。もし100%のものしか世の中には出さない!という完璧主義に囚われていたら、おそらくリリースする頃には他の企業に市場は奪われているでしょう。

建築の設計だとなかなかそうはいかないところもあります。一度建ってしまった建物を後でアップデートするのは相当に金も時間もかかります。鉄筋が足りなかったとか、梁のサイズが違ったとか、そういう不完全さを持ったままリリースしたら致命的です。だから建築は設計から施工を経るまでの間に何重ものチェックを経て慎重に慎重に進められます。そこには建築基準法や消防法などの法規もあればJIS規格もあれば、関連する企業の独自の社内基準によるチェックもあります。現場では設計図に変なところがないか気にしながら施工者が製作図を作成し、それを設計者がチェックし、さらに図面の通りに施行されているか監理者がチェックします。またそれを行政や確認検査機関がチェックします。とにかく幾重にもチェック機構が働きます。

これがデータ(IT)と物質(建築)のスピード感の違いです。

 

好きなことをやる

最近、人生100年時代になると今までのように1つのキャリアを全うするだけであとは老後、というライフプランは成り立たないということがよく言われます。キャリの複線化、まるで株のポートフォリオ分散投資を心掛けるように、人のキャリアも複数路線に分散するという考え方です。これをホリエモンは「多動力」と呼んでいます。落合陽一は「百姓化」と呼んでいます。とにかく1つの道に絞るのではなく、色々やってみる。その時にとにかく自分のやりたいこと、好きなことをやる。「苦労に耐えながら1つの道をストイックに求道者のように追求する」のが従来の日本ではよしとされていましたがその逆です。その方が時代の変化についていけるし、言われたことを真面目るやる機会のような仕事は機械やAIにやらせれば良いので、もっとクリエイティブでトンがったことができる人が求められる。そうなると好きなことをやっている人にはなかなかかないません。ユーチューバーなんかもその現れの1つでしょう。

建築家も副業?

建築設計というのは元々その職業の中に複数の職能を含んでいるようなところがあります。設計した建物のコンセプトを語ったり、理論をまとめたりする時には物書きになるし、アイデアスケッチを描いたりドローイングを描いたりする時には画家になるし、それをネットに公開する時にはウェブデザイナーになるし、ロゴデザインをやる時にはグラフィックデザイナーになるし、独立していれば経営者もやります。そこからスピンアウトするように例えば物書きで副収入を得るとか、絵を描いて稼ぐとか、グラフィックデザインをバイト感覚でやるとか、最近だとプロジェクトマネジメントとかコンストラクションマネジメントみたいな仕事には需要がるのでそれを副業的にやる方法もありそうです。

私は建築設計の仕事をたまたまやっていますが、本当はどんな仕事にもつきたくないなと学生時代考えていました。できればリリーフランキーみたいに絵を描いたり、映画に出たり、写真撮ったりギター弾いたり、小説書いたり、何が専門だかよくわからない人になりたかったです。もし世の中がそっちの方向に向かっているのだとしたら、自分にとっては嬉しい世の中になってきているなと感じている今日この頃です。

評価:★★★(5段階評価)