とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「モデュロールⅠ」ル・コルビュジエ

モデュロールマン」という曲を作っています(笑)

最近、趣味でやっているバンドで曲を作っています。所詮素人のバンドなので、プロみたいな曲は作れません。でも、建築をやっている人間だからこそ作れる曲ならあるかもしれないと思って今作っているのが「モデュロールマン」という曲です(笑)

曲は大体出来上がっているのですが、そういえば「モデュロール」ってきちんと読んだことあったっけな、と思い、アマゾンで古本を注文しました。読みたい本が明確な時、アマゾンで古本を探すのが安上がりで時間もかかりません。

独自の寸法体系「モデュロール

モデュロールというのはコルビュジエが美しく、人間の尺度に合い、かつ工業生産の理にかなった寸法体系として独自に開発したものです。本書はその発想の瞬間から、ユニテダビタシオンなどの実作に応用するまでを書いたものです。ものの寸法を決めるのに、モデュロールに規定された寸法を使えば、美しく、機能的な建物が設計できると、と。そういう寸法の体系をコルビュジエは考えました。

コルビュジエの自己演出

読んでいて面白いのは文章の人称が「彼」であることです。自分で書いているくせに、その一部始終を「彼」で書き始める。それは今でいうと「プロフェッショナル仕事の流儀」や「情熱大陸」を自分で作って自分で編集し、ナレーションするようなものです。そうすることで、コルビュジエは自分のアイデアをあたかも客観的に評価を得たもののように語ることができます。気恥ずかしくてなかなかマネできる方法ではないと思いますが、この自己演出というかプロデュース能力があったからこそ、コルビュジエコルビュジエになれたのだと思います。

執念

ミケランジェロのカピトルの絵葉書に、もう一枚の絵はがきを重ね、その直角をカピトルのファサードの頂点に重なると様々な寸法が幾何学的な法則に基づいて決定されていることを発見するところから物語はスタートします。(これも演出の可能性がありますが)それを執拗に補強し、ブラッシュアップし、権威付けし(アインシュタインの名前も出てきます)、家具、展覧会の展示計画、建築に応用し、実現していくまでの執念たるやすさまじいものがあります。コルビュジエはあくまでもこれはツールだと言っています。これを使えば必ず美しく、機能的な建築ができるわけではない。ただ、デザインの仕方をデザインする。デザインするためのツールや考え方そのものをデザインするというのは本当にすごいことだと思います。

今、モデュロールを使って設計している人はほとんどいないと思いますが(実際には寸法が中途半端で使いづらかったりする)、その思想自体は今でも人間工学の分野で活かされているといえるかもしれません。

たまにはSD選書で建築の古典的名著に触れるのもいいものですね。

 

評価:★★★★(5段階評価)

 

モデュロール 1 (SD選書 111)

モデュロール 1 (SD選書 111)