とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「橘玲の「中国私論」」橘玲

設計をしていると中国に出張で行く機会があります

建築の設計の仕事をしている関係でたまに中国に出張に行くことがあります。建物の外壁は構造ビルだとカーテンのようにぶら下げる「カーテンウォール」という技術を使いことが多いです。施工的には現場ではこれをひっかけるだけで済むというメリットがあります。このカーテンウォールを中国で作ることが多いため、中国に出張に行くのです。また、石材の加工も中国で行うことが多い。いずれも国内で製作するよりも中国で作ったほうが安いからです。

中国を知りたい

実際に行く機会があるとその国に対する興味が倍増します。中国というのはいったいどういう国なのか。自分が目にする光景は何を意味しているのか。それを知りたくて本書を手に取りました。

度を過ぎた大規模な開発

本書の冒頭から紹介されているのは中国各地で行われる大規模な都市開発と、鬼城(ゴーストタウン)の現状。投資目的で買われたマンションには実際にはほとんど入居者はおらず、工事自体が途中で中断されたものも多いという現状。内モンゴル自治区のオルドスなんかは一時期日本の有名建築家も召集されて、「オルドス100」という100件の前衛的住宅を建設するプロジェクトで盛り上がっていたのですが、どうやら中断してしまったようです。

裏切られることを前提とした社会

その他にも橘さんの視点で中国の様々な側面が描かれるのですが、不信社会ともいうべき中国の実態とそれを生んだ歴史的経緯が解説されます。弱肉強食の騙しあい。その一方で「幇」という濃密な人間関係の内側にいる人間(ヤクザの「兄弟」に似ているかもしれません)には徹底的にホスピタリティに溢れていいます。

本の内容を厦門で確認

先日も厦門に数日間の出張に行きましたが、厦門もものすごく都市開発が進んでいます。地下鉄なんて同時に何線も工事を進めています。ただ、高層マンションには明かりがまばらで、聞くと実際の入居率は6割くらいで、投資目的で済んでいない人も多いとのことでした。

また、偽札も多いことも影響してウォーチャットペイやアリペイなどの電子マネーの利用が日常化していました。

本を読む→現地で確認する→また本を読む

このプロセスを回している時が一番楽しいですね。

評価:★★★(五段階評価)

 

橘玲の中国私論

橘玲の中国私論