とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「お金2.0」佐藤航陽

帯には「仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評価経済・・・「新しい経済」を私たちはどう生きるか!」とあります。まさにテクノロジーで経済の仕組みがどう変わろうとしているかを若き起業家が語っている本です。

「資本主義」から「価値主義へ」

最も印象に残ったのは「資本主義」から「価値主義」への変化を述べた章でした。著者は価値には3種類あるといいます。

①有用性としての価値価値

②内面的な価値

③社会的な価値

今まで資本主義で可視化できていたのは①だけだったのが、価値主義の考え方では②も③も可視化できるようになる。しかも①~③は互いにいつでも交換可能になる。具体的には社会的なネットワーク(ソーシャルキャピタル)を持っている人が力を持つようになり、営利と非営利の境界が消え、経済と政治の境界も消えていく。

そして複数の経済が並立する時代になり、人々はどの経済圏で生きるかを選ぶようになるといいます。

新しいマネーの乱立

たしかにすでにその傾向はあちこちで出てきているような気がします。youtubefacebook、インスタのフォロワーがずば抜けて多い人はそれだけで生きていけます。フォロワーが多く、発信力が多いという価値をお金に変換することも簡単です。個人の時間をネットで株のように売ったり、個人を株式会社のように投資対象にしたりするネット上のサービスもいろいろ出てきています。お金も円以外にビットコインもあればLINEマネーもあればTポイントもあれば、マイルもあれば、もはや新しいマネーのカンブリア爆発と言わんばかりの乱立ぶりです。世の中でなされている価値の交換を円だけではとても説明しきれなくなってきている。

資本主義のバージョンアップはIT界隈が成し遂げるかもしれない

驚いたのは著者の佐藤さんが自分より年下だったことです。中学時代だったか、高校時代だったか学校の先生が「今は民主主義と資本主義はとりあえず最もベターな社会システムだということになっている。ただし、ベストではなさそうだということはわかっている。いつかどこかの天才がこれに代わるシステムを考え付くかもしれない。」というようなことを言っていました。ひょっとしたか「資本主義」から「価値主義」への転換はそれにあたるかもしれないなと思わせられる本でした。ITという技術の発展が資本主義のバージョンアップをしつつある。そしてそれは既成概念にとらわれない若い世代がなしとげつつある。そんな感じがします。

文章も明快で分かりやすく、経営者として最先端を走りながら考えた新鮮な内容で、売れているのも頷ける名著です。

 

評価:★★★★★(五段階評価)

 

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

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