「描クえもん」佐藤秀峰
本との偶然の出会いも本屋の魅力
普段行く本屋とは違う本屋さんに行くと、普段は通らないジャンルの棚の前を通って意外な本に出会うことがあります。久しぶりに下北沢のビレッジバンガードに行ったら、面白そうな漫画があり、4冊も衝動買いしてしまいました。
物言う漫画家、佐藤秀峰
「海猿」「ブラックジャックによろしく」などの作品で知られる佐藤秀峰さんが漫画家のリアルを描いた作品です。佐藤さん本人もこれまで出版社などと色々と揉めたり、独自の漫画配信サービスを開始したりと、漫画家の契約にまつわる問題にはかなり敏感な方なのでそのあたりの描写には執念を感じます。
藤子不二雄へのオマージュ
漫画家としてデビューを目指す満賀描男の元にある日、未来の自分を名乗る太って禿げて飲んだくれの男が現れ、居候を始めます。眠る時には押し入れに入り、そのシルエットはドラえもんを彷彿とさせます。ドラえもんを下敷きにしつつ、徹底的にリアルな漫画家の現実を描くという面白い設定です。かつて藤子不二雄が自身の漫画家になるプロセスを描いた「まんが道」という傑作がありました。主人公は満賀道夫。今回の主人公の名前も明らかにそれを意識しています。
出版社に対する憎悪
そして描かれる漫画家の現実は壮絶です。編集者にゴミのように扱われる漫画家の現実。ブラック企業どころでは無い劣悪な労働環境。編集者の描き方なんて白目の極悪人です。相当な恨みを感じます(笑)
立場の弱いクリエイター
本当にアイデアを出し、物を作っているクリエイティブな人の立場というのは往々にして弱いものです。大きなシステムの中で作品を売りさばく人たちの方が立場が強い。多かれ少なかれ建築界にも似たところがあるので共感します。
子供の頃、本気で漫画家を目指していました。ならなくてよかったと改めて思いました。でも、この漫画、めちゃくちゃ面白いです。2巻が待ち遠しい。
評価:★★★★★(五段階評価)