とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「人生100年時代のお金の不安がなくなる話」竹中平蔵 出口治明

言わずと知れた竹中平蔵さんと出口治明さんが人生100年時代の生き方や経済について語り合う対談本です。

第1章は、まず、世界の変化に関する現状認識からスタートします。フィンテックの発達、現金から電子決済に日常の会計も移行しつつある世界のトレンドに乗り遅れつつある日本、グローバリズムとその反動してのブレグジットやトランプ現象、などなど。

第2章は超高齢化社会の老後のお金について。年金問題よりも深刻なのは医療費の問題だと言います。爆発的な勢いで膨らむ医療費。今のままの制度は早晩破綻が見えており、負担を増やすか、給付を減らすかの決断を迫られつつあります。二人の主張は年寄りを優遇しすぎる年齢差別、エイジ・ディスクリミネーションを無くし、年齢を問わず一律負担にすることで超高齢化社会を乗り越えてはどうかと提案されています。また、個人のレベルではお金の心配をする前に「何をしたいか」を考えて生きることが、年を取ってからも充実した人生を送れるかどうかを左右すると言っています。

第3章は人生100年時代の働き方がテーマ。AIで奪われる仕事もあるが、新たに生まれる仕事もあるし、とにかく積極的にやりたいことを年齢に関係なくやるのが大事、というような内容です。読んでいると歳を取っても心身共に若く、柔軟で、元気でいることが今まで以上に大事だなと思わされます。

第4章はこれからの時代に活躍できる人の条件がテーマ。個性第一、脱協調性、そして自分の頭で考える力が重要との主張です。そしてそれはベンチャーを起こして成功する人に共通する資質でもあるそうです。

第5章は今後の日本経済について語ります。オリンピックの締め切り効果をうまく生かして構造改革をすべし、眠っている資産を活かすべし、移民を受け入れる制度を整備して人口減少に対応すべし、そんな事が提案されています。ネットなんかを見ていると日本にはまだまだ移民に対するアレルギーがあるようですが、個人的にはどんどん移民を入れるべきだと思います。すぐに治安が悪化すると言う人がいますが、ちょっと外国人をバカにしすぎている気がします。きちんとした審査を経て、能力のある人を受け入れれば、きっと日本経済にとってもプラスになると思います。トラブルは起きるだろうけど、文化的違いを乗り越えて共存してこそ、本当のグローバル化と言える気がします。

第6章は日本を変えるために必要なこととして道州制を訴えています。これについてはもう少し詳しく内容を知りたい気もしますが、人口が急激に減っていく中で部分最適ではなく、全体最適を求めて都市を縮小していくには確かに道州制を導入するなどしてより広域的な視点から資金を分配していく必要があるのはわかる気がします。

超クレバーな人同士の井戸端会議を覗き見しているような感覚になれる一冊です。

 

評価:★★★(五段階評価)