とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「GA JAPAN 148 特集 小嶋一浩の手がかり」

デザインオリエンテッドな建築雑誌

日本の建築雑誌の中でも写真を中心とした紙面づくりでデザインを語るスタンスなのがこのGA JAPANです。写真家二川幸夫さんが創刊し、今は息子の二川由夫さんが後を継いでいます。

学生時代には建築雑誌をしょっちゅう買っていましたが、今では事務所に置いてある雑誌をパラパラとめくる程度で、あまり熱心に読まなくなってしまいましたが、今回、久しぶりにこの雑誌を買ったのは小嶋一浩さんの特集が組まれていたからです。

小嶋さんとの不思議な縁

建築ユニット、シーラカンスのフロントマンでもあった小嶋さんが亡くなられて一年。結局直接お目にかかる機会はありませんでした。学生時代、同じくシーラカンスの工藤和美さんが博多小学校を設計されていた頃、現場事務所で模型づくりを手伝っていたことがあります。また、当時九州で学生をしていた私ですが、大学院は東京に出たいと思っていたこともあり、興味のある東京の大学の研究室を見てまわっていました。その中の1つが当時東京理科大にあった小嶋研究室でした。私はウニの瓶詰めをお土産に持って、研究室を訪ねましたが、小嶋先生は不在で、研究室の方に小嶋さんに渡してもらうようにお願いしましたが、その後どうなったか分かりません。

就職すると、上司が原研究室時代の小嶋さんの同級生でした。原さんや小嶋さんの話を聞いてワクワクしたのを思い出します。そんなわけで小嶋さんは個人的にもずっと気になる存在でした。

モダニズムを信じている建築家

小嶋さんの建築の魅力は何と言っても作家性という名のブラックボックスに隠蔽されないそのロジカルな方法論です。スペースブロック、白と黒、アクティビティ、等、得意の学校建築を中心に理論がきっちりと実践にまで透徹されていて明快でした。それは設計をする上でも、すでに実現している世の中の数多の建築を読み解く上でも有効なロジックたちであったと思います。作家性はなかなか共有できませんが、ロジックは他の建築家と共有することができます。そう考えると小嶋さんが建築界に残した功績はすごく大きいと読んでいて改めて思いました。ひょっとしたらこれからシーラカンスの出身者ですごい建築家が出てくるかもしれません。

小嶋さんの尾崎豊的エピソード

師匠である原広司さんへのインタビューも面白いです。特に学生時代の小嶋さんがブチ切れして尾崎豊ばりに校舎の窓ガラスを割ってまわったエピソードなんかも。

もっと次回作を観たかった建築家です。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

 

GA JAPAN 148

GA JAPAN 148