とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「縮小ニッポンの衝撃」NHKスペシャル取材班

グラフを見るだけでも価値のある本

2008年をピークに減少に転じた日本の人口。それが何を意味するのかをまとめた新書です。4ページ目に掲載されている人口予測のグラフを見るだけでも価値のある本だと思います。

日本の経済成長は人口増のおかげだった

1868年の明治維新の時の人口が約3300万人、そこから2008年の12808万人まで日本の人口は急激に増えていることがわかります。爆発的と言ってもいいほどの激増です。このブログでも紹介したデービット・アトキンソンさんの著作でも日本の経済成長はものづくりの力より何よりこの人口増加によるものだと指摘されています。全てがこの右肩上がりの人口増加を前提として成り立っていました。

ジェットコースターのように転げ落ちる人口

それが2008年を境に反転します。まさに崖を転がり落ちるように人口が減っていきます。2100年には6000万人を切ると予測されています。あと80年で日本の人口は終戦前の人数まで激減します。ちょっと空恐ろしいほどのグラフです。

人口が減ると税収が減り、自治体のサービスが崩壊します。すでに人口の減少が激しい自治体の破綻が始まっています。本書で取り上げられているのは北海道・夕張市島根県雲南市益田市等。雨漏りする公共施設の補修もままならず、公務員の人数も収入も激減し、まさに地方が壊死していく様子が描かれています。そしてこの凄惨な状況がこれから日本中を虫食い状に襲っていくことがほぼ避けられない状況になっていることがよくわかります。

東京病患者のような状態

読んでいて壊死していく脚を生きるために切断せざるを得ない糖尿病患者を思い出しました。日本は残念ながらそこまで来てしまっています。。

コンパクトシティ

建築や都市計画の分野に引きつけて考えて見ると、コンパクトシティに向かわざるを得ないことが見えて来ます。広がった都市をいかにうまく剪定し、コンパクトにまとめながら撤退戦を行うかが今後の日本の都市計画のテーマになります。ポジティブに考えれば、都市が自然に還っていくとも捉えられます。

この状況に一個人としてどう対応するか

一市民としては、人口がこれだけ減っていく時代に不動産は投資対象として有望ではないので、なるべく土地は持たずに賃貸で生きていくほうが理にかなっていると再認識しました。また、日本が経済的に沈没していく可能性が高いので、投資信託の国内比率は低く抑えて、リスクを回避する方針も間違っていなさそうだと再認識しました。そして、もし自分に子供ができたら、この沈没していく国からいつでも脱出できる能力とフットワークの軽さを持った人間に育てようと思いました。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

 

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)