とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「成功はゴミ箱の中に」レイ・クロック、ロバート・アンダーソン

柳井さんと孫さんが絶賛する男

マクドナルド創業者、レイ・クロックの自伝的ビジネス書です。序文をユニクロ柳井正さんが、あとがきをソフトバンク孫正義さんが書き、さらに柳井さんと孫さんの対談まで巻末に収められており、柳井さんに至ってはこの本をバイブルだとまで言っています。この二人がそんなにお勧めするならと手にとってみました。

柳井さんのロールモデル、レイ・クロック

ミキサーのセールスをやっていた52歳のレイクロックが、マクドナルドをチェーン化し、日々改善を重ねながら合理的なシステムを完成させ、世界のファストフード業界を席巻するまでの試行錯誤が描かれた本でした。フライドポテトの製造工程ひとつ取っても試行錯誤の連続で、温度湿度管理の方法、効率的に上げるための道具の開発、冷凍技術の導入、と様々なプロセスを経て日々改善がなされていったことがわかります。そうやって磨きに磨いたシステムを大々的な広告プロモーションとともに広めていく。その姿は確かにユニクロの成長物語とダブります。柳井さんはレイ・クロックをひとつのロールモデルとしながら、ユニクロのシステムを日々磨き、世界に広げようとしているのだということがこれを読むとわかる気がします。

ペーパーカップを売っていた頃

レイ・クロックはマクドナルドを操業する前に様々なビジネスを経験していますが、ペーパーカップのセールスをやっていた頃からビジネスの才能に溢れていたようです。ウォルグリーン・ドラッグ・カンパニーという会社にペーパーカップを売り込んだ時にはランチタイムにドリンクのテイクアウトサービスを行なえば、お店の売り上げもアップするはずだと説得を試み、なかなか話に乗ってこない責任者に「200個でも300個でもカバー付きカップを最初は無料で提供するから試してみてくれ」と言って、これが大当たり、無事に大口の受注を獲得するというシーンがあります。重要なのは、このアイデアがお店も、お客も、自分の会社もハッピーになるアイデアだということです。この調子でレイ・クロックは日々「三方良し」のアイデアを思いついては実行に移し、成果を上げていきます。その様子が読んでいて爽快です。

マインドフルネスの先駆者!?

第5章はストレスに打ち勝つ!と題された章です。
「この時期、問題に押しつぶされない方法を私は学んだ。一度にひとつのことしか悩まず、問題をずるずる引きずらない。
 毎晩眠りに就く前に、独自に開発した自己睡眠法を行なった。〜中略〜
 まず頭の中に黒板をイメージする。緊急のメッセージで埋め尽くされているが、黒板消しを持った手が、それらを端からきれいにしていく。頭の中をこれで空っぽにした。途中で雑念が生まれたら、大きくなる前に消し去った。次に、体をリラックスさせた。首の後ろから下がっていき、背中、肩、腕、足、そして指先まで。終わる頃には不快眠りについていた。慣れるに従って、一連の手順を短時間でできるようになっていった。〜秘訣は、一部の無駄もない、質の高い睡眠にあった。」

これは今流行りのマインドフルネスとか睡眠法そのものでしょう。1940年代頃にすでにそんなことを意識していたというのがちょっと驚きです。

 

読んでいたら今度はマクドナルドを日本に広めた藤田田さんの本も読んでみたくなってきました。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)

成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)