とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「笑福亭鶴瓶論」戸部田 誠

笑福亭鶴瓶さんがどんな芸人であるかをそのデビューの頃から掘り下げて分析した新書です。本書で取り上げられる鶴瓶さんの特徴をいくつかかいつまんでみると、

・人見知り、時間見知り、場所見知りしない

・最高の状態でナメさせる男

・落語家のイメージを壊したいという反骨精神のアフロヘアー

・趣味は嫁

などなど、確かにと思ったりなる程と思わせるエピソードがてんこ盛りです。特にこの「人見知り、時間見知り、場所見知りしない」というのは「家族に乾杯」などの番組でも遺憾無く発揮されていて、タモリさんが地理や歴史に注目するのと対照的に一般の人たちの面白さにフォーカスし、さっと懐に入り込んでいく様が語られます。そんなキャラクターが縁を呼びさらにまた縁を呼び、時に奇跡的なエピソードが生まれたり、面白いできことが起きたりします。セレンディピティってこういうことをいうのかな、という気がします。

私はどちらかというとパッと初対面の人の懐に飛び込むのは苦手なので、こういう才能には憧れがあります。たけし、タモリ、さんま、鶴瓶、みんな全くタイプは違うキャラクターです。オープンなタイプもいれば普段は無口な人もいます。正解はないのでしょうが、あえて若手にも突っ込みやすいスキを与えていじらせる、というような人心掌握術みたいなものがあるのだとすれば、お笑い芸人に限らず普通の会社員、とくに部下を持つような世代の人達にも参考になるところがあるようにも思えます。

 

評価:★★★(五段階評価)

 

 

笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)

笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)