とあるリーマン建築家の書評ブログ

建築、デザイン、アート、ビジネスなどを中心に興味の赴くままに読んだ本を不定期でご紹介します。

「海外でデザインを仕事にする」岡田栄造編

アラフォーデザイナー達の海外での悪戦苦闘

私と同じアラフォー世代で、海外に飛び出した十四人のデザイナーの悪戦苦闘の様子をまとめた本です。同じシリーズですでに刊行されている「海外で建築を仕事にする」、「海外で建築を仕事にする2」も面白かったので読んでみました。

今回はプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、テキスタイルデザイン等多様な分野で活躍する人たちが取り上げられています。渡航先も欧米だけでなく、アジアやアフリカまで様々。今まで以上にアジアやアフリカでデザインの仕事をする人が増えているような気がします。そこには欧米のように恵まれた労働環境などは整っていない反面、手探りで未来を切り開こうとするパワーがあるような気がします。

いつか国際的な仕事をしてみたいとも思いながら、結局ドメスティックな環境に収まっている自分に「本当でお前はそれでいいのか」と問いかけられているような気になりました。

 

評価:★★★★(五段階評価)

 

海外でデザインを仕事にする

海外でデザインを仕事にする

  • 作者: 岡田栄造,鈴木元,森山茜,青木翔平,福定良佑,村上あずさ,?島泰,今村ひかる,長田喜晃,青木慶一,小林耕太,山本尚明,中山雄太,清水花笑,川島高
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 単行本
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海外で建築を仕事にする

海外で建築を仕事にする

  • 作者: 前田茂樹,吉田信夫,伊藤廉,松原弘典,田根剛,高濱史子,豊田啓介,小沢慎吾,エマニュエル・ムホー,後藤克史,柏木由人,小塙芳秀,梅原悟,吉田智史,原田雄次,佐貫大輔,西澤俊理
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2013/07/26
  • メディア: 単行本
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海外で建築を仕事にする2 都市・ランドスケープ編

海外で建築を仕事にする2 都市・ランドスケープ編

  • 作者: 福岡孝則,別所力,戸村英子,吉村有司,原田芳樹,保清人,會澤佐恵子,長谷川真紀,石田真実,小川愛,渡辺義之,木藤健二郎,遠藤賢也,小笠原伸樹,鶴田景子,金香昌治
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2015/10/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「人を動かす人になれ!」永守重信

日本電産の社長である永守重信さんのリーダー論です。

 

最終的には「人」とはどういうものかを知っているかどうか

前回、明石家さんま原作の「Jimmy」を紹介しましたが、どんな分野も突き詰めると「人間はどういう生き物か」「人間はどんな時どんな気持ちになるのか」を知るということにたどり着くのかなという気がしました。最終的には人を知らないと笑わすこともできないし、何万人という社員を動かすこともできない。

部下をどう叱るか、どうフォローするか。リーダーとしてビジョンを語る時に、相手によって危機感と夢を語る比率をどう変えるか。どう褒めるか。

そういったリーダーとしての考え方やノウハウが平易な言葉で端的に書かれています。とにかく言葉がわかりやすい。これも何万人という社員を動かす経営者に共通しているような気がします。

 

臨機応変に対応する柔軟さ

ただ、人より長く、土日もなく働くようなモーレツ社員をを是とする考え方の方で、そうやって会社を大きくさせてきた方なので、この本もそのような労働観に基づいて書かれています。出版されたのが1998年。まだ今ほど働き方改革が叫ばれる以前に書かれたものです。

すごいのは最近の永守さんのインタビューなどを読むと、真逆のことを言っています。モーレツ社員でやってきたけれど、これからは働き方を変えなければいけない、ワークライフバランスが大事だと言っています。あの歳で必要とあらば時代に合わせて考え方を柔軟に変えられる。それが名経営者たる所以かもしれません。

 

モーターの需要

これからドローンや電気自動車、介護ロボットなどなどモーターの需要はますます高まりそうな気配です。日本電産がどうなるのか。ポスト永守時代はどうなるのか。ウォッチしていきたいところです。

 

評価;★★★★(五段階評価)

 

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

 

 

 

 

「Jimmy」原作 明石家さんま

主演俳優のスキャンダルでお蔵入りになりそうだと話題のドラマの原作本です。原作者は明石家さんま。主人公はもちろんジミー大西です。
明石家さんまを中心として村上ショージMr.オクレといったいつものメンバーの若かりし頃の爆笑エピソードのオンパレードなのはもちろんなのですが、とにかくジミー大西という人の不器用さとまっすぐさ、明石家さんまという人の大きさ、優しさに胸を打たれちょっとホロリとさせられます。読むと人間がちょっと好きになる。そんな小説です。
小説が面白いだけにお蔵入りになってしまうのが本当に惜しい。なんとかドラマを予定通り放送して欲しいものです。

評価:★★★★★(五段階評価)

 

Jimmy (文春文庫)

Jimmy (文春文庫)

 

 

「わかりたい!現代アート」布施英利

現代アートを語る上で欠かせない34人のアーティストを「モダン」と「ポップ」という2つのキーワードでザックリと概観する現代アートの初学者向けの文庫本です。

私は現代アートの体系だった知識は持ち合わせていませんが、好きで美術館に展覧会を観に行ったり、建築設計の仕事をするなかで、パブリックアートなんかを設置したり、アーティストの方と一緒に仕事をする機会があったりと、それなりに現代アートに触れ合う機会はあります。ところが断片的な知識が断片のままふわふわしてなかなか像を結ばない。そんなこともあって、現代アートのザックリした全体像をちゃんと頭に入れておきたいなあと、たまに初学者向けの現代アート本を手に取ることがあります。

この本には34人のアーティストが「要するにに何をやろうとしたのか、どこが評価されたのか」を時系列に並べて平易な言葉でまとめています。時系列に並べ、現代アートの進化の文脈が整理され、それをモダンとポップというキーワードで整理してくれているおかげで頭の中をふわふわ漂っている断片的な知識がに、インデックスをを付けて棚に並べ直してくれるような本です。

弱点は写真があるものの作品そのものの写真が掲載されていないことでしょうか。私も作品をよく知らない作家の章はいまいちピンと来ませんでした。そういう意味では作品を知っている前提で書かれた本かもしれません。

 

評価:★★★(5段階評価)